椅子やソファーの張り地には、合皮・本革・布地と主に3種類の生地がありますが
その中でも柄や素材感や機能性などが一番豊富な「布地」に焦点を絞って、種類や機能性、そしてメンテナンスなどに関してお問合せ頂く事も多いので、それらに関してお話していきたいと思います。
いろいろな柄や色の中から生地を選ぶのが楽しく
テキスタイルが大好き!という方も多いのではないでしょうか。
布地はいろいろなパターンの生地があって選ぶのも楽しいけど、実際は詳しく分からないところもあるから楽しみだわ!
椅子張り用の布地は座る事を前提に作られているから、他の布とは少し違うところもあるので、そのあたりも知ってもらえると今後役立つと思うよ
椅子張り用の布地と一般的な布地の違い
椅子張り用の生地というのは、布に限らず本革や合皮も含めて一般的な布に比べて違う点が幾つかあります。
1,摩耗強度が必要
ソファーや椅子に座ったり寝そべったりすると、どうしても布地と肌の間に摩擦が起きてしまいます。
その摩擦が起こる事によって、生地が擦れてしまったりとするのでソファーや椅子のカバーに使われる生地はメーカーによって摩耗試験が行われクリアしたものが製品になっています。
あらかじめ織フェルトの上に標準試験布を重ねて取り付けた摩耗台の上にのせて、多方向に摩擦して試験をします。
糸切れ、外形変化等が起こった時点を終点とし回数を計測します。
2,毛玉の発生も抑える必要がある
布に毛玉ができるのは、生地が擦れる事によって摩擦が起こるためです。
摩擦が生じると微弱な静電気が発生し繊維同士が絡み毛玉になってしまうのです。
その為摩擦が頻繁に起きる椅子やソファーのカバーに使う生地は、毛玉が出来るのも出来るだけ抑えなければいけないので、それも勘案してつくられます。
そして、それに対応する試験も製造の段階で行われます。
コルクで囲われた箱の中に入れられ、10時間回転させて毛玉が発生する度合いを測ります。糸の形状にもよりますが、糸の強度が必要以上に強すぎると毛玉の発生につながります。糸の力よりも組織のバランスで強度を保つように設計するのが、椅子張りの特徴です。
3.耐光性を保つ必要がある
椅子やソファーはリビングなどの明るいところにも設置される場合が多く、お部屋の中でメインの家具にもなりますが、明るいところに設置されるといことは紫外線を浴びる時間も自ずと長くなりますね。
生地を色付けするときに染色によって色が付けられているので、紫外線による退色が進みやすくなってしまいます。
その為、紫外線による耐光性を保つ必要があるのでその為の試験もクリアしなければいけません。
カーボン菅に電流を流して紫外線を発光させ、光による色落ちの具合を計測します。
フル稼働で試験しています。
4,滑脱抵抗力
なんだかよく分からない言葉。。。
という声も聞こえてきそうですが、ソファーや椅子のカバーを作成する時に縫製作業によるミシンでの縫い合わせは欠かせません。
そしてクッションの上から最後は生地を張り込んで仕上げていきますが、その際タッカーでステープルというホチキスの針のようなもので生地を留めていきます。
そういった作業をする時に、生地が弱いといけないのでそのあたりも試験や検査をします。
縫い目やタッカーの打ち込みによる糸抜けが無いか確認します。
この数値が弱くてもミシンの精度や調整で大分カバーできるのですが、安定度を管理するためにも用います。
また試験中に縦横の強度バランスを見るのにも適しており使用します。
他にも生地の剥離強度や引っ張り強度など幾つかの検証を行い、椅子張り用の布地として
製品化されています。
6 布地の裏にバックコーティングやもう一枚の布地
椅子張り用の生地には、裏側にバックコーティングが施されていたり、もう一枚の薄いフィルムの様な布が張られていたりすることも多くあります。
目的は、引っ張り強度を上げたり解れ止めの効果があったり、他の布地に比べてその辺りの違いもあるのです。
椅子張り用の布地の機能性
椅子やソファーのカバーに使用される布には、機能性を持った生地もいろいろあり、それぞれの環境や用途によって最適な機能を選べる事も椅子張り用布地の特徴です。
では、その機能にはどの様なものがあるのかを見ていきましょう。
小さな子供がいるから、ソファの生地が食べこぼしなんかで頻繁に汚れてしまうの。
そういう時に洗えるような生地もあるのか
もちろんあるよ! ウォッシャブル機能を持った生地を選ぶと家庭用洗剤で洗う事が
出来るんだ。 他にも色々な機能があるからここで主な機能性を紹介していくね。
撥水
こちらはなかなか人気のある機能になり、撥水機能を持った生地を選ぶ方も多くいます。
よく聞かれる質問の中に、「撥水と防水はどう違うの?」という質問を受けることがあり、詳しく説明するとかなり細かくなってしまいますので深いところまでの説明はしませんが、
簡単に言うと
撥水⇨水を弾くもの(シャワーの様な強い水圧は水を通すけれど、通常の水圧は水を弾く)
防水⇨完全に水を通さない(傘などは防水なので通気が無く、完全に水をシャットダウンする)
ということになります。
椅子張り生地には、防水機能を持った生地はほぼ無くほとんどが「撥水機能」の生地になります。
撥水機能は通気性をある程度保てるので、ムレを防げて椅子やソファーへの用途には適している為です。
ウォッシャブル
家庭用洗剤で選択できる機能になり、着脱の出来るクッションカバーやカバーリング式の椅子やソファーのカバーなどは、汚れた時に選択できるのが大きなメリットになります。
小さなお子さんやペットのいる家庭などで、役立つ機能だと思います。
耐光性と耐候性
耐光性と耐候性どちらもタイコウセイなので間違えそうです。(笑)
耐光性は光に対する耐久性の意味合いなので、紫外線の良く当たる場所で使うソファーや椅子のカバーが色落ちしてしまうなどの恐れがある時に役立つ機能性ですね。
耐候性は屋外で仮にソファーや椅子をつかう時に、太陽光や雨風、湿度など生地にとってはいろいろな敵が存在しますが、それに対する機能のでクルーザーに使われる椅子、キャンプで使う椅子など、屋外使用をする場合に役立つ機能です。
イージークリーン
これは、水や中性洗剤で汚れが落ちやすいことを示す機能になりますので、よく生地を掃除したりする方にはうってつけではないでしょうか。
因みに、長期間放っておかれた汚れなどにはなかなか効果は得られにくいと思います。
汚れてしまった時には出来るだけ早めの対処がベターですね。
抗菌
抗菌加工で表面に付着した菌の繁殖を抑える機能になります。
全ての菌の繁殖を抑える事は難しいと思いますが、このマークの無い生地に比べて
清潔感は保ちやすいでしょう。
耐次亜塩素酸
生地をメンテナンスする時に、薬剤を使う場合があると思いますがその薬剤の中でも
塩素系薬剤のメンテナンスに強いことを示すものになります。
耐アルコール
耐アルコール機能は、こちらも耐次亜塩素酸と同様に薬剤対する機能性になりますが、エタノールなどアルコール系薬剤のメンテナンスに強い商品を示します。
布地は柄や色が沢山あるだけじゃなくて、機能も結構沢山の種類があるのね、これなら色々なで使えそう。
このほかにも、アクアクリーン機能や自動車でも使える難燃機能などもあって多種多様なんだ
布地のメンテナンス方法
実際に生地をお手入れする際に、どの様な事に気を付けて、どんな方法でメンテナンスしてあげると良いのかということを、見ていきたいと思います。
・汚れが付着してしまった際も強くこすらない
・溶剤系の薬品をつかって汚れなど拭き取ろうとしない
※ボールペンやマジックインクの跡などを除去する時には、必ずしもNGではありませんが色落ちや溶解などのリスクもある為、溶剤の使用後には溶剤をしっかり落とすことを
おすすめします。
・掃除機をかけるときは出来るだけ柔らかめのブラシのノズルが付いたものでかける
・ブラッシングする時は、硬すぎるブラシは避け柔らかくて張りのあるものを選ぶ
(馬毛や山羊や豚毛など)
・汚れや水分などは早めに拭き取る
・シミなどになりそうな場合は、中性洗剤を30度~40度のぬるま湯で、3%~5%ほどに薄め、出来上がった液体を吸水性のある布に浸し擦らずに叩くように掃除します。
それによって濡れた部分は陰干しでゆっくりと乾かす方がベストです。
直射日光や乾燥機などは生地の硬化や縮みを招く可能性が高く、おすすめしません。
椅子張り用の布地は摩耗強度などが考慮されて、耐久性も一般的な布地に比べて弱くないところもありますが、強い負荷が布にかかるとやはり良くありません。
洗剤や薬剤などをつかってふき取りや掃除をする時には、目立たない場所で一度試して問題が起きなければ汚れた箇所を拭き取るなどが良いと思います。
素材によるメンテンナンスの注意点
ベルベットやモケット生地
ベルベットやモケットは布の中でも繊細な生地です。直接アイロンをあてると表面の形が変わったり、変色を起こす場合があるので注意しましょう。
終わりに
いかがだったでしょうか。
布地のお手入れや機能についてご紹介させて頂きましたが、お手入れ方法については他にも様々な方法がインターネット上で紹介されています。
どの方法が一番適しているかというのは、素材や汚れなどの程度にもよって変わってくる場合もあると思いますが、椅子張り用の生地の特性などを知って頂く事で、椅子やソファのカバーを張り替えるときや、新しくソファーや椅子を購入する時にも少しでもお役に立てて頂けると嬉しいです。
※生地のメンテナンスやお手入れに関しましては、自己責任にてお願い致します。
それらに関する対応やクレームには対処致しかねます事をご承知おきください。