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COLUMN

ソファーの座面だけが傷む理由とは?| 部分張り替えで賢く修理する方法

なぜ座面だけが先に傷むのか?

ソファや椅子は長く使うことで次第に劣化しますが、特に座面だけが先に傷んでしまうという現象は、多くのソファや椅子で見られます。

背もたれはまだキレイなのに、座面だけがヘタったり、生地の表面が剥がれたり、ひび割れたり、破れたり、汚れたりしてしまう

この記事では、その理由などを解説し、さらに「座面だけを張り替えることはできるのか?」という疑問にもお答えします。ソファを買い替える前に、賢く修理して長く使うための方法を、プロ目線でわかりやすくご紹介します。

 

座面だけが傷みやすい理由

1-1. 体重が集中する

ソファの座面は、常に人の体重を直接受け止める場所です。立ち座りの際にも負荷が集中し、同じ場所ばかり使っていると、特定部分がどんどん劣化します。体重の負荷が毎日何度もかかることで、クッション材(ウレタン)が沈んで行き、ウェービングベルトなども徐々に伸びていきます。

ウレタンクッションは新品の状態よりも、少し慣れてきたくらいの時期に体形などに馴染んで程よい座り心地になってきますが、それが年数が経過し行き過ぎるとヘタリなどに変わってきてしまいます。

また、同じ位置に座るクセがあると、特定箇所に負荷が集中します。

たとえば、テレビを見ながらいつも右側に座るという人は、その部分だけが明らかにへたることも多くあります。

 

1-2. 摩擦による表面劣化

ソファや椅子は当然座る為のものなので、生地と体の間に摩擦が起きるのは仕方ないのですが、一番摩擦が生じやすいのは当然お尻のあたる座面です。

致し方ないのですが、デニム素材の衣類などは摩耗性が高く、頻繁に座ることで布地表面が白っぽくなったり、毛羽立ちが目立ったりすることがあります。

また、子供がジャンプしたり、ペットが爪を立てたりすることも、摩耗や破損の原因になります。

 

1-3. 皮脂・汗・湿気が集中する

人が座ることで、汗や皮脂、湿気が座面の生地に吸収されます。これにより、布地や革は黒ずみ、合皮や本革はひび割れや硬化を引き起こします。特に夏場や暖房使用時などは、湿気の溜まり過ぎに注意する必要があります。

人間の皮膚からは1時間で約2030mlの汗が分泌されるとされており、それが直接クッションに吸収されることでカビ・異臭の原因になります。

また、飲み物をこぼしたり、ペットの粗相などが加わることで、清潔感が失われやすくなります。

吸水性の高さでいうと、布、本革、合皮の順に高くなりますが吸水性が高いからと言って一概にソファや椅子に合っている、合っていないなどの判断はつかないかと思います。

なぜなら使用目的や環境により、生地の種類を選ぶことも大切で、仮に吸水性の高い布であっても逆にいうと蒸れにくいという事にも繋がります。

そして吸水性の無い合皮の場合は、布に比べて蒸れやすいという面があるかも知れませんが、ちょっとした飲みこぼしの水分も簡単に拭き取る事が出来たりというメリットもあります。

更に詳しい生地の事を知りたい場合は、下記のリンクにそれぞれの生地の種類別に特徴とメンテナンスについてまとめてますので、ご覧ください。

合皮の特徴とメンテナンスについて

 

布地の特徴やメンテナンスについて

 

本革生地の事とメンテナンスについて

 

1-4. 座面の構造で消耗が早いケースも

ソファの座面は、ウレタンフォーム・バネ(Sバネやウェービングベルト)・木枠といった複数の部材から構成されています。これらが長年の使用によってへたり、座り心地が悪くなるだけでなく、ギシギシと音がするようになったりします。

ですので、構造自体は似ていてもウェービングベルトの本数が少なすぎたり、伸びやすいベルトだったり、スプリングが極端に細く強度の低い物が使われている。

ウレタンクッションの密度が低い。

などにより、消耗が早く進む事もあります。

 

1-5. 背もたれ・肘掛けは使われ方が異なる

一方で背もたれや肘掛けは荷重や摩擦が座面に比べると少ない場合も多く、座面に比べて接触する頻度も少ないので、素材の劣化スピードが座面に比べて遅くなる場合が殆どです。

肘掛に関しては、いつも同じ片側に座り、肘を常においている。

などの場合はその限りでは無いかと思います。

背もたれは頭や背中を支えるものの、全体重を受けることはなく、摩耗頻度も少なめです。これらの原因によって比較的奇麗な状態を状態を保ちやすいです。

あるお客様の本革のソファの実例ですが、30年使っているという革のソファーがありました。

そのソファは背もたれ部分にはほとんどの時間、カバーを掛けて使用していて、座面はカバーを掛けずにそのまま使っていました。

それによって30年たっても背凭れの革の部分は、驚くほど奇麗な状態で座面だけが乾燥と摩擦で色が抜け落ち、傷も多くカサカサの状態だっという事がありました。

紫外線も革や生地へのダメージを与える要素の一つで、常に紫外線があたる状態だと生地が乾燥し、座った時の摩擦と相まって革のひび割れや、布の薄れや破れなどを起こします。

ただ、ソファや椅子は暗い場所では無く、明るいダイニングなどで使われる事が多いので、完全防御は難しく、先ほどのお話で座面にカバーを掛けて使用するとカバーと生地の間にも摩擦が生じてしまう可能性があるので、その辺りの判断は難しいですが

生地の劣化を早める一つの原因として頭に入れておくと、違うかと思います。

第2章:座面だけの張り替えはできるのか?

2-1. 結論:できます!

座面だけの張り替えは、実際に多くのケースで対応可能です。座面の構造が独立しているソファ(座クッションが取り外せるタイプ)やそうでなくても縫製のステッチで切り離せるようなタイプのカバーであれば、可能です。

張り替えと同時に中のクッションの修理も可能で、それにより座り心地と生地の劣化を改善できます。

また、費用面でも背凭れや肘掛、または本体の革や布を全て張り替えより安価で済みます。見た目だけでなく、快適さを取り戻せるのも大きな魅力です。

但し、張り替える前と同じ生地があるケースもありますが、そうでないケースもあるのでその場合は出来る限り質感や色などを合わせて作業するという事になります。

 

第3章:座面だけなど部分的に張り替えた時の仕上がりは?

座面だけを張り替えた場合には、どの様な仕上がりになるの?

など疑問が残ると思いますので、ソファや椅子などの座面だけを張り替えた事例をいくつかご紹介させて頂きたい思いますので、是非ご参考にして頂きお役立ていただけると幸いです。

 

  • 【ケース1】エルポの本革ソファー 座面と両肘の張り替えとクッション修理をした事例

(張り替え前)

 

(張り替え後)

 

 

ドイツのソファーブランド、エルポの本革ソファーです。

このソファーは肘掛と座面の両方に劣化があったので、座面と肘掛を張り替えし背凭れやそのほかの本体部分の革はそのまま、という形で作業をした実例になります。

張り替える範囲が肘掛までという事で、色の差異が大きくなってしまうと仕上がりの違和感が出てしまうので出来る限り、近い色味を選択して張替えをしました。

 

  • 【ケース2】赤い本革ソファー 座面だけを張り替えてクッション修理をした事例

 

(張替え前)

 

(張り替え後)

 

 

こちらはリビングでの存在感もひと際ありそうな、真っ赤な本革ソファです。

ご自宅のリフォームと同時にソファのリフレッシュを考えていたようで、ソファーの座面だけが傷んでいた為、座面だけを張り替えさせて頂きました。

色合わせも上手くいき、仕上がりの違和感も抑えられたかと思います。

革を選ぶときには、色ももちろん重要ですが張り替えない場所の革のシボとも出来るだけ近いものを選びます。

シボと言うのは革の表面にある、細かなシワの様なもので本来はナチュラルなシボであれば牛などが生きている間に作った細かなシワです。

ただそのままの状態だと、肌に出来た大きな傷などもそのままという事になってしましますので、製品にする段階でシボを殆ど見せないスムースな状態や、型押しといってシボの模様が入った版を革に押して作った、シュリンクレザーなどが一般的です。

そのシボの感じが張り替えない箇所と大きく違うと、色が同じでも見た目の違和感が大きくなってしまうので、シボをどのくらい張り替えない箇所に近づけるかも重要な作業です。

 

 

  • 【ケース3】ハイバックの椅子の座面だけを張り替えた事例

 

(張替え前)

 

(張り替え後)

 

こちらはハイバックのダイニングチェアになります。

背もたれはとても奇麗な状態で、リサイクルレザーのような革が使われていましたが、座面だけが傷んで割れてきてしまっていたので座面だけを張り替えるような施工になりました。

座面は本革で張り替えを行い、色味も近いもので張り替えました。

部分的な張り替えでも、傷んでいた箇所が奇麗になると張替え前に比べて

かなり印象も良くなりますね。

 

  • 【ケース4】ロルフベンツ6500 座面の革を張り替えた事例

 

(張替え前)

 

(張り替え後)

 

 

こちらはドイツのソファ、ロルフベンツ6500の事例になります。

このソファーもやはり座面だけが傷んできてしまいました。

横幅もかなり大きなソファーで、座面も有効的につかえるので座面だけが傷んでしまっても不思議では無いかと思います。

他の部分はクリーニングで黒ずみや多少のこびり付いた異物を除去してから、座面部分の張り替えとクッションのヘタリ修理を行いました。

使用感のあるソファーは、変色している場所とそうでない場所などがあったりするケースもあるので、その分部分張り替えの場合は色合わせも難しくなる時があるのですが、出来るだけ全体のバランスを見てとにかく仕上がりに違和感の無いように気を付けています。

 

おわりに

如何でしたでしょうか。

どの事例もお客様にご満足いただけたことが有難く、且つ全体的に張り替えるよりも安価に済ませられるケースが殆どです。

座面だけを張り替えるソファや椅子は柄合わせが無い事や、色合わせや素材感の問題から本革やフェイクレザーでの施工事例が多いです。

ただどの様な生地の組み合わせにも自由に出来ますので、革のソファで座面を布に張り替えたりというケースも御座います。

全ての椅子やソファーが部分張り替えが出来るかと言われると、そうでないケースもありますが、出来る場合であればこの様な張替え方法も、一度張替え方法も検討してみては如何でしょうか。

いろいろな自由な発想で張り替えを楽しんでいただけたらと思います。