皆さんご存知のように、椅子やソファーの張り地に合成皮革があります。
張り替えやオーダーでの制作をさせて頂く際に、「本革と合皮生地のどちらにしようか迷っている」「合皮のメンテナンスはどうやってしていったらいいの?」などの声をお客様から良くいただきます。
合皮生地をより詳しく知ることで、メンテナンスへの疑問や不安を解消し、生地を選ぶときに迷った際の判断材料に使ってもらえたらと思います。
因みにソファーや椅子に使われる合皮は、服や財布などに使われる合皮と違い、メーカーによって摩耗性などが考えられて製品化されているものも多く、アパレル用の合皮に比べより耐久性が高いと言えます。
※正確には合成皮革と人工皮革には違いがありますが、ここではその辺りは割愛させて
いただき本革に似せた素材全般を合皮と呼ばせて頂きます。
この前のソファーを買おうと家具屋さんに行ったけど、合皮も本革も値段の違い以外がよく分からなくて、結局選びきれずに帰ってきたわ
今回のこの知識を知ってもらうと、ソファーや椅子の生地が合皮だった時に見る目が変わるかもしれないね! 買う前や張り替える前に先のメンテナンスの事も考えられるようになると思うから、是非最後まで見てみてね!
1.合皮の種類
合皮の中でも、使われている表面の被膜加工に違いがあって、それにより劣化の仕方や
肌触り、質感や見え方も違ってきます。
素材の違い
合皮の表面の被膜には、大きく分けて「PVC」と「PU」という違いがあり
PVCは塩化ビニール樹脂を塗布してできたもので、PUはポリウレタン樹脂を塗布したものになりますが
どちらも下地には布などが使われており、それぞれの特徴は異なってきます。
PVC特徴 :比較的値段が安めの物がおおい
:水弾きがよくメンテナンスが容易
:表面がPVCに比べ硬くつるつるとしている
:加工性が高く色々な色やデザインを作りやすい
:劣化してきて来たときには表面が硬化して、割れてくる
PU 特徴 :PVCに比べ表面が柔らかく弾力性があり上質な質感があ
:合皮の中では値段が高め
:PVCに比べて通気性がある
:劣化した際には加水分解を起こし表面がポロポロと剥がれてくる(湿度の高い場所などは加水分解を起こしやすい)
へー、合皮は全て同じように作られていると思っていたけどそういう訳でもないのね。
それぞれの特徴を知れると、生地選びに役に立ちそうね!
2.合皮が劣化する原因
合皮にはPVCとPU素材があることを説明しましたが、ではそれぞれの素材が劣化する原因とはどのようなものがあるのかを見ていきたいと思います。
合皮が劣化する原因の一つとして、「加水分解」というのがあるのは知っている人も多いのではないでしょうか。
加水分解は、ソファーや椅子カバー表面の合皮のウレタン樹脂が水分と化学反応を起こして劣化するというものです。
特に「PU」素材のカバーに起こりやすい現象ですが
普通に部屋で使っている椅子やソファーのカバーの他、カバンや小物類に使われているPU素材の合皮にも起こります。
空気中に少なからず含まれている水分の影響ですね。
又、紫外線や頻度の高い摩擦も劣化を早めるの原因となります。
PVCは特に通気性がPUに比べて低いので、締め切った状態の部屋などで長期間放っておくと湿気も溜まりやすく、それも劣化を早める原因となるのでPU素材も含めて通気性を保ってあげる事も大事かと思います。
湿気や水など、過度な水分は合皮の敵なのね。
ソファーの為に通気なんて考えたことも無かったわ
そうは言いつつも、あまりシビアになる必要は無いと思うから定期的に少しでも
気にしてあげるとソファーや椅子のカバーの持ちも違うかもしれないね
3.合皮の劣化を遅らせるために
椅子やソファーのカバーを合成皮革にしたときに、劣化する原因は分かったけれども、じゃあ実際にメンテナンスするにはどうしたらいいの?
そんな声も聞こえてきそうなので、次はソファーや椅子の合成皮革カバーのメンテナンスについてお伝えしたいと思います。
劣化を遅らせる為の対策
1.1か所への摩擦を軽減するために、入れ替えの出来るクッションの場合は座る場所を
集中させずにクッションを定期的に入れ替えながら座る
2.できる限りソファーや椅子のある部屋は通気性を保つことで、湿気の溜まりなどを軽減する
3.カバーの上についた余計な水分は直ぐに拭き取り、定期的に乾拭きをすることで汚れの除去や空気中のホコリなどが溜まる事を防ぐ
4,別のソファーカバーを被せる事は、カバーと合皮との間に摩擦が起きてしまうので極力避ける
4.合皮素材の耐久性
つづいては合成皮革の耐久性についてですが、合成皮革は早ければ1年程度で劣化が目に見える状態になってしまうものも存在しますが、それは正直海外との加工方法との違いによる部分が大きく少し極端な例かと思います。
国内メーカーの物や、海外製でもしっかりとしたものであれば劣化が始まり出すのは3年から5年ほどで劣化が始まり出すと言われています。
劣化が始まり出すというのは、目に見えて生地の表面が剥がれていたり、割れてきたりという訳ではなく表面に見えない状態であっても中で劣化の進行が進みだすという意味です。
国内のメーカーでは耐久性10年を謡っているメーカーもあり、使用する環境やメンテナンスの状態にも寄るので一概には言えませんが、椅子やソファーを購入する時や張り替える時の目安にしてみてはどうでしょうか。
ここまではよくわかったけれど、さっきも話したように合皮と本革は結局どっちが良いの?
それを知りたいわ。
結局また家具屋さんに行って迷って買わずに帰ってくることになりそう(;’∀’)
それを次に説明するね、是非ソファーや椅子のカバー生地を選ぶ際に参考にしてみて!
5.ソファーや椅子の張地は本革と合皮、どちらが良いの?
ここまで合成皮革について、特徴からメンテンスのことなどお伝えしてきましたが
張り替えやオーダーを頂く際に「合皮の生地と本革生地、どちらにしようか迷っている」
という声を頻繁に頂きます。
使う環境が飲食店や、小さなお子さんなどがいるご家庭には、飲みこぼしや防汚の目線から
メンテナンスに手間の掛からない合成皮革をお勧めする事が多いですが、ソファーや椅子の使用環境や今後どのように使っていくかにもよるかと思いますので、一概には言えません。
ですので、ここでは本革と合皮のそれぞれの特徴をお伝えしますので、メリットやデメリットを参考に判断材料として使っていただけたらと思います。
【本革】
メリット
・高級感や重厚感があり、豪華な空間を演出できる
・質感や肌触りが良い
・通気性が合皮に比べ高く湿気がこもりにくい
・選ぶ革の種類によっては、革の風合いが楽しめる
・部分的に傷や擦れなどが出来てしまっても、張り替えずに修理出来る場合が多い
デメリット
・値段が高い
・選ぶ革の種類によってはシミや汚れが付きやすく、気を使う
・素材に自体が軽くないので、ソファ―全体の重さが増す
・デザインや柄などの種類は少ない
【合皮】
メリット
・価格が安いものから選べる
・水をはじくので、表面にシミや汚れが付きにくい
・柄が豊富なので、考えている空間を演出しやすい
・耐アルコール、抗カビ、抗菌など機能性生地もある
デメリット
・安価なものは本革に比べて安っぽく見える
・部分的な劣化も張り替える必要がある
・本革に比べムレやすい
・素材自体の耐久性が本革に比べて劣る
6.終わりに
いかがでしたでしょうか。
ここまで、椅子やソファーのカバーとして張られる合成皮革についてお話させて頂きました。
多少なりとも生地を選ぶときの知識として、お手伝いできていれば嬉しいです。
ソファーや椅子は選ぶ生地の種類などによって、同じ椅子やソファーでも雰囲気がかなり変わると思います。
リビングのメインにもなる家具だと思いますので、張り替えの際にも是非楽しみながら生地を選んでみてはいかがでしょうか。