2026.08.05

ハンス J. ウェグナーの椅子「CH30」の生地の張り替えとクッションと木部修理

BEFORE

AFTER

修理内容

モデル名
CH30
種類
ダイニングチェア
施工方法
木部塗装と修理生地の張り替え
修理工賃
¥60000〜¥90000
お預かり期間
4週間
配送方法
自社便
依頼地域
東京都渋谷区
修理内容

北欧デザインの巨匠ハンス J. ウェグナー(Hans J. Wegner)が1954年に発表した名作ダイニングチェア「CH30」。

今回張り替え修理にお預かりしたのは、長年の年月を経て使い込まれたヴィンテージの「CH302脚でした。

背もたれの木部破損や脚部のグラつき、座面クッションの著しい劣化など、一見すると大きなダメージを負っていた2脚。

職人の手による丁寧な木部修復と、耐久性に優れた「ノーシュリンク(防縮)本革」を用いた座面の張り替え作業を経て、蘇った修復のプロセスとビフォーアフターをご紹介します。

 

1.巨匠ハンス J. ウェグナーと「CH30

ハンス J. ウェグナー(1914-2007)は、デンマークの家具デザインにおいて最高峰と称されるデザイナーです。

生涯で500脚以上の椅子をデザインし、「椅子の巨匠」として世界中で知られています。

17歳で家具職人(マイスター)の資格を取得したウェグナーの作品は、美しいフォルムだけでなく、構造への深い理解と座り心地の良さが特徴です。

今回修復した「CH30」は、カール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Son)社の代表作のひとつ。

緩やかなカーブを描くオーバル型のバックレストと、背面にあしらわれた十字型の埋木(十字象嵌)が象徴的なデザインです。

コンパクトでありながら体を優しく支える包容力があり、ヴィンテージ市場でも大きな人気を誇ります。

2.【Before】修復前の状態

工房に到着した際、2脚のCH30はそれぞれ異なる傷みを抱えていました。

  • 1脚目(ファブリック座面・写真右): 座面の緑色のファブリック生地が大きく破れ、中のウレタンフォームが剥き出しになって劣化が進んでいました。また、バックレスト(背もたれ)の木部に亀裂が入り、構造的な強度が著しく低下している状態でした。
  • 2脚目(ビニールレザー座面・写真左): 茶色の合成皮革(ビニールレザー)が張られていましたが、経年変化による硬化が見られ、脚部やフレーム全体の構造的な組み緩み・グラつきがあり、背もたれの板も取れてしまっていました。

     

    3.修理のプロセス

     

    木部修理・解体と接合

    まずは破損していた背もたれの木部修復から着手しました。

    折れた部分やクラックの入った接合面を慎重に処理し、エポキシ系・木工用構造接着剤と圧着クランプを用いて再接合を行いました。

    あわせて、脚部やフレーム全体のゆるみも一度組み直し、ぐらつきを完全に解消しています。

     

    ウレタンの剥離と基礎成形

    座面は古い張り地をすべて剥ぎ取り、加水分解してボロボロになっていた内部の古いウレタンフォームを完全に除去しました。

    土台となる合板部分をきれいに清掃・補修した後、硬さの異なる新しいウレタンフォームを貼り付けていきました。

    椅子として座りやすいように、クッションの厚みはある程度出しましたがあまり厚くすると椅子のデザインも変わってしまうので適切な厚みで貼っています。

    ノーシュリンク本革による張り替え

    今回の仕上げには、椅子張り用の耐摩耗性に優れたノーシュリンクの表面に凹凸のないスムースレザーを使用しました。

    革の場合は布や合皮と違い、生地に厚みがあるのでその分張り込む際にシワが残らないよう張り込んでいきます。

    背もたれのフレームと座面の楕円ラインに完璧に沿うよう、職人が手作業で革を引き込みながらシワなく均一に固定。

    シックで洗練された高級感漂うブラックレザーで包み込みました。

     

    4.【After】再生された「CH30

    すべての工程が完了し、アンティークの雰囲気を残しつつも機能性を取り戻したCH30が完成しました。

    背もたれの破損跡は目立たなく整えられ、経年で味わいを増した木の質感と、新品のブラックレザーが見事な対比を成しています。

    内部ウレタンを更新したことで、新品当時のような心地よい弾力性とフィット感が復活しました。

    項目 Repair Before(修理前) Repair After(修理後)
    座面張り地 破れたファブリック / 劣化合成皮革 椅子張り用ノーシュリンク本革(ブラック)
    内部クッション 劣化・硬化したウレタン 新しいウレタンクッションへ全面交換
    木部フレーム 背もたれの折れ・亀裂・脚のグラつき 再接着・組直し補強によって強度復元
    座り心地 底付き感があり 適度な反発力と安定感のある座り心地
    1. おわりに

    丁寧に作られた木製家具は、傷んだ箇所を修理し、張り地やクッションを整えることで再び長く使うことができます。

    今回の2脚のCH30も、木部の補強と新たな本革への張り替えを行ったことで、これからも日常生活の中で安心してお使いいただける状態に整いました。今後も長く使っていただければ幸いです。

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