2026.06.29
マルトスタムNo33 カンティレバーチェアの張り替え スティールライン社 No33
修理内容
- モデル名
- マルト スタム/No33カンティレバーチェア
- 種類
- ダイニングチェア
- 施工方法
- 生地の張り替え
- 修理工賃
- ¥30000〜¥60000
- お預かり期間
- 4週間
- 配送方法
- 自社便
- 依頼地域
- 東京都世田谷区
- 修理内容
-
大田区のお客様から、マルト・スタムのNo.33カンティレバーチェアを2脚お預かりしました。イタリアのスティールライン社製です。
2脚ともかなり年季の入った椅子で、長い期間愛用されてきたことが張り替え前の画像からも分かります。
革には皮脂などもかなり含んでしまっていて、破れの程度も激しい状態でした。
同じように黒い本革を使い張り替えていきました。
この椅子はフレームはかなり強固で、フレームにお錆などはありましたが、座ることには全く問題のない強度がありましたので、革を張り替えてスチール部分を磨いてあげれば綺麗な状態に戻ります。
カンティレバーチェアって、そもそも何?
カンティレバーというのは「片持ち梁」という構造のことです。
後ろ脚がなく、S字やU字に曲げたスチールパイプ1本だけで座面と背もたれを支えています。
見た目がすっきりしているのはそのためで、脚が4本ある普通の椅子とは根本的に構造が違います。
これを椅子に最初に取り入れたのが、オランダのデザイナー、マルト・スタムです。
1926年にガス管を繋いでプロトタイプをつくり、翌年の建築展覧会で発表しました。
当時の建築やデザインの世界にはかなり衝撃的だったようで、同じ時期にミース・ファン・デル・ローエやマルセル・ブロイヤーも同じような椅子を作っていたことで、特許をめぐる争いにまで発展しています。
カンティレバーチェアの座り心地の特徴は、座ったときにほんのり「しなる」こと。
フレームが弾性で体重を受け止めてくれるので、クッションがなくても意外と疲れにくいんです。
この独特の感触が今でも世界中で人気な理由のひとつだと思います。
スティールライン社のNo.33
今回お預かりしたのはイタリアのスティールライン社のNo.33になります。
バウハウス時代のオリジナルデザインを、イタリアのクオリティで丁寧に再現しているメーカーです。
2脚とも艶のある黒革が張られたシンプルな仕様。長く使い込まれていて、特に座面は革が伸びてたわみが出ていました。
薄い革では張り替えできない理由
ふつうのソファや椅子の張り替えは、1mm前後の薄くて柔らかい革を使います。
下にウレタンなどのクッション材があり、かつ丸味を帯びていたり、複雑な形状をしていたりもするので寧ろ革の厚さは邪魔になるケースが多くあります。
でもカンティレバーチェアは座面も背もたれも、革だけで体重を受け止めています。
革の下を支えるバネやウレタンなどのクッション類はありません。
つまり革そのものが「構造の一部」として働いているわけです。
ここに薄いソフトレザーを使うと、荷重を支えきれず伸びてしまったりするのでお尻が下にかなり落ちてしまったりします。
薄い革でも芯材などを使って作る方法を取ることが出来ますが、施工後のことを考えると、やはり張り替え前と同じように厚手の革を使い交換するのがベストだと思います。
オリジナルが厚手の革を採用しているのは、見た目の問題意外にも強度の問題もあるのです。
今回使ったのは厚手のオイルレザーです。オイルをたっぷり含ませてなめした革で、しなやかさと強度を両立しているのが特徴です。
カンティレバーチェアのように革だけで荷重を受け続ける用途には、こういった厚みと粘りのある革が適しています。
色はオリジナルに合わせたブラック。
極厚ミシンと革漉き——厚革を縫うための準備
今回の作業で避けて通れなかったのが、ミシンまわりのセッティングです。
座面と背もたれのパーツを縫い合わせると、重なった部分の革の厚みは合計4〜5mmになります。これは一般的な椅子張り替えで使う薄革とは別次元の厚さで、ふつうのミシンではまず針が通りません。
こういった極厚の革を縫うには、まず工業用の極厚ミシンが必要です。
さらに今回のように5番・1番といった太い糸を使う場合は、ミシンの釜(糸を絡める内部パーツ)を加工しないと正常に縫えないことがあります。
糸の太さに合わせて釜の動きを調整する、地味ですが重要な工程です。
また、パーツの場所によっては革漉き加工も行います。
革漉きとは、革の断面を薄く削る加工のことです。縫い目が重なる部分や折り返す部分など、そのままでは厚くなりすぎる箇所を漉いて、縫いやすくしたり仕上がりをきれいにしたりします。薄革の張り替えではあまり必要ない工程ですが、厚革を使う場合には欠かせません。
椅子の張り替えはCHAIRSへ
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- とても上手に直していただき有難うございます。
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