2025.10.29
【カッシーナ412キャブチェア修理】チャイナレッドからタバコブラウンへ。椅子の塗装メンテナンス
修理内容
- メーカー名
-
Cassina/カッシーナ
- メーカ紹介
-
17 世紀、イタリアに誕生したカッシーナ社は、家具業界において数少ないリーディングブランドとして世界中に知られています。完成度の高さとデザインの美しさは他の追随を許さず、数多くの製品がニューヨーク近代美術館の永久所蔵品になっています。
- モデル名
- 412キャブチェア
- 種類
- ダイニングチェア
- 施工方法
- 本革のクリーニングや塗装
- 修理工賃
- ¥30000〜¥60000
- お預かり期間
- 4週間
- 配送方法
- 自社便
- 依頼地域
- 東京都世田谷区
- 修理内容
-
■ 「キャブチェア」とは
イタリアの名門家具ブランド「カッシーナ(Cassina)」を代表する名作、412 アームレスキャブチェア(Cab Chair)。
1977年、デザイナーのマリオ・ベリーニによって発表され、今なお世界中のデザイン愛好家から高い評価を受け続けているチェアです。キャブチェアの最大の特徴は、金属フレームに本革を被せて仕上げる構造。
一般的な椅子張り替えのようにクッションにカバーを張り込むのではなくて、まるで「革が椅子の骨格を包み込むような独創的デザインは、何とも言えない独特な魅力を感じます。今回お預かりしたのは、そのキャブチェアのチャイナレッド色モデル。
経年劣化によって全体的に細かなキズやコバ(淵)の塗料剥がれが目立つようになり、同時に「もう少し落ち着いた色合いに変えたい」というお客様のご希望から、タバコブラウンへのカラーチェンジを行いました。■ ご依頼内容と椅子の状態
長年使用されたキャブチェアは、座面や背もたれに無数の細かい擦れキズがあり、全体にツヤが不均一になっていました。
特に目立っていたのは、コバと呼ばれる椅子の淵部分の塗料剥がれ。キャブチェアだけではありませんが、財布やベルトなどの小物、靴や椅子など、本来切りっぱなしの淵を処理する為に塗料などで仕上げる箇所ですが、この縁の塗装ラインがデザイン上のアクセントにもなっているので、そこが擦れて下地が見えてしまうと、全体的にも古びた印象などを与えてしまいます。革の塗装修理については、本革であればどんな状態でも出来るものでは無く、革の状態によっては塗装が難しい場合もあります。
あまりにも革に油分が含みすぎていたりすると、塗料が密着しません。
修理後すぐは奇麗になったようにも見えるのですが、塗料が密着しない為剥がれなどの原因にもなってきます。
また、劣化の激しすぎるものなどは張り替えをお勧めいたします。
基本的には上塗り塗装になるので、寿命を過ぎた革を塗装しても長くは使えないと判断した場合はお勧めしておりません。
■ 修理工程:塗装による再生の流れ
ここからは、今回行った塗装修理の工程を詳しくご紹介します。
「下地処理」から仕上げまで、実は小さな工程の積み重ねで仕上がっています。
① 油分・汚れの除去(下地処理)
まず最初に行うのは、革表面に蓄積した油分や汚れの除去です。
長年使われた椅子には、皮脂などの油分が残っており、そのまま塗装をすると塗料が密着せず、後に剥離やムラの原因となります。
専用のリムーバーなどを使い、拭き上げていきます。この工程は、仕上がりを左右する重要な下準備の一つです。
② 表面研磨
次に行うのが、革表面全体の研磨。
既存の塗膜を軽く削り、表面を荒らして塗料の密着性を高めます。革の塗装修理は革を染め上げるのではなく、上塗り作業になる為、既存の塗料を落としていかないと塗料が密着しません。
使用する研磨剤の粒度を変えながら、進めます。
この研磨によって、表面の微細なキズも同時に修正していきます。時間の掛かる作業ではありますが、怠る事の出来ない作業の一つです。
③ 下地塗装と調色
下地処理が終わった後、調色した塗料を薄く吹き付けていきます。
厚く塗れば仕上がりは早いものの、内部の乾燥が不十分になり、後に剥がれなどの原因になります。
そのため、薄く塗装 → 乾燥 → 軽研磨 → 再塗装…を繰り返し、少しずつ着色と傷の修正を進めていきます。④ コバ(淵)部分の塗装仕上げ
そして最後にコバともいわれる小口の仕上げを行います。
革の断面部分を均一に整え、塗料を薄く重ねていきます。
塗布と乾燥と研磨を数回繰り返すことで仕上げていき、デザインの輪郭が引き締まります。⑤ 最終仕上げとトップコート
全体の色味と光沢を確認しながら、最終的にトップコートを吹き付けて完成です。
■ カラーチェンジのポイント:チャイナレッド → タバコブラウン
もともとのチャイナレッドは鮮やかで存在感のある色でしたが、室内の照明やインテリアのトーンによっては主張が強く感じられることもあります。
今回のタバコブラウンは、落ち着きのある濃茶色。
この色味を選ぶことで、- より落ち着いたシックな印象
- 汚れの目立ちにくさ
- 色々な色調の部屋にも合う汎用性
といったメリットも生まれたかと思います。
■ お客様の声
修理後のチェアをお届けした際、お客様からは
「素晴らしい仕上がりで嬉しい」
と有難いお言葉をいただきました。
作業させて頂いた側としてもとても嬉しく思います。
■ まとめ
今回のカッシーナ412キャブチェアの修理事例は、
「張り替え」ではなく「塗装」というアプローチで椅子を再生した一例です。今回のようなメンテナンスを行うことで、傷や劣化を修理すると同時に椅子のイメージを変える事も出来ます。
今使っている椅子やソファに飽きてしまった、リノベーションと同時に家具の雰囲気も変えたい、椅子やソファが劣化してしまって廃棄しようか買い替えようか迷っている。
などのお困りごとがある際は、一度張替えや修理を検討してみては如何でしょうか。
- お客様の声
- 素晴らしい仕上がりで喜んでいます。
