2026.02.27

カンディハウス「トムテ」スツール:毛羽立ちによる羊毛フェルトの交換修理

BEFORE

AFTER

修理内容

モデル名
トムテスツール
種類
オットマン
施工方法
生地の張り替え
修理工賃
¥10000〜¥30000
お預かり期間
3週間
配送方法
自社便
依頼地域
千葉県八千代市
修理内容

1.家具と暮らす時間:スツールという存在の役割

私たちの生活空間において、スツールという家具は非常にユニークな立ち位置にあります。

ソファのように大きく場所を占めることはありませんが、玄関で靴を履く際の手助けをしたり、リビングで少し腰を下ろす場所になったり、時にはサイドテーブルのように使われたりと、その用途は多岐にわたります。

今回お預かりしたのは、北海道・旭川に拠点を置く日本を代表する家具メーカー、カンディハウス(CONDE HOUSE)の「トムテ(TOMTE)」スツールです。

写真にある通り、大小2つのサイズがあり、親子のような、あるいは生き物のような愛らしい形が特徴的な一脚です。

長年使い込まれてきたこのスツールを、これからも長く使い続けるために、今回は座面のフェルト部分を新しく張り替えることになりました。

 

2.修理前の状態:フェルトという素材の経年変化

修理前の状態を確認すると、まず目に飛び込んできたのは座面を覆うフェルトの「毛羽立ち」でした。

フェルトは、繊維を絡ませて作られる素材であるため、人が座って摩擦が繰り返されることで、表面の繊維が浮き出し、毛玉のようになったり、全体的にモコモコとした質感に変わっていったりします。

お預かりしたスツールは、長年大切に使われてきた形跡があり、座面の端の方や、よく身体が触れる部分のフェルトが薄くなったり、毛羽立ちによって本来のシャープなシルエットが少しぼやけて見えてしまっていました。

木部である成形合板のフレームは、時間が経つにつれて深みを増した良い色合いになっていただけに、座面の消耗が目立ってしまうのは避けられないことでした。

フェルトが傷むと、座った時の肌触りが悪くなるだけでなく、見た目の清潔感も損なわれてしまうため、今回はこの部分を交換することになりました。

3.「トムテ」というデザインの背景:グンター・ケーニッヒ氏の視点

ここで、この「トムテ」というスツールのデザインについて改めて触れておきます。

このスツールをデザインしたのは、ドイツのデザイナー、グンター・ケーニッヒ(Gunther König)氏です。1974年の発表以来、カンディハウスの象徴的なプロダクトとして世界中で愛されてきました。

ケーニッヒ氏のデザインは、ドイツらしい質実剛健な機能性と、どこか愛嬌のあるフォルムが共存しているのが特徴です。

「トムテ」とは北欧の伝承に登場する、家を守ってくれる小さな妖精のこと。

その名の通り、成形合板を大胆に曲げた有機的な形は、まるで生き物のような温かみを感じさせます。

1枚の板を曲げることで脚と座面を一体化させたその構造は、旭川の高度な木工技術があってこそ実現できたものです。

その柔らかな木の曲線の上に、今回新しく張り替えた羊毛フェルトが重なることで、素材同士が引き立て合う完成された美しさが再び蘇りました。

4.素材の選択:なぜ100%の羊毛フェルトなのか

今回の修理に使用した素材は天然の「羊毛(ウール)フェルト」になります。

ポリエステルなどの化学繊維だけで作られたフェルトの使用も可能ですが、羊毛フェルトには、化学繊維にはない以下のような優れた特性があります。

4.1 独特の密度と弾力

羊毛の繊維には「スケール」と呼ばれる鱗のような構造があり、それが複雑に絡み合うことで、非常に高い密度と弾力が生まれます。座った際に、適度なクッション性を感じさせてくれるのは、この天然繊維の力によるものです。

4.2 調湿性と肌触り

ウールは「呼吸する繊維」や「天然エアコン」とも言われ、湿気を吸ったり吐いたりする性質があります。

湿気を吸って放出する調湿機能が綿の約2倍、ポリエステルの約40倍以上とも言われます。

そのため、夏はベタつかず、冬は暖かく、一年を通して快適な肌触りを保ってくれます。

4.3 長い年月で見せる美しさ

羊毛フェルトは使い込むほどに少しずつ馴染んでいき、木部の変化と同じように、使う人なりの味わいが出てきます。張り替えたばかりの今だけでなく、先の姿を見据えての交換です。

 

5.作業工程

5.1 古いフェルトの取り外し

まずは古いフェルト生地を木部から取り外します。

5.2 木部のメンテナンス

結果特に問題はありませんでしたが、フェルトを剥がした後の木枠(成形合板)の状態もチェックしました。

5.3 フェルトの裁断

フェルト生地は1枚の大きなシートの為、そこから交換する座面の形状に合わせてフェルトを裁断していきます。

5.4フェルトの取り付け

トムテの座面は平らではなく、美しいカーブを描いています。厚みのある羊毛フェルトを、この三次元の曲線に沿って、しわが出ないように、配置し取り付けていきます。

完成後

作業が完了した大小2つのトムテスツールを並べてみると、その雰囲気は交換前と見違えるようになりました。

以前の毛羽立ちが目立っていた状態から一転、羊毛フェルトならではの密度の高い、きめ細やかな質感が戻り。

明るい色調の木部との相性も抜群で、まるで新品の時の瑞々しさを取り戻したかのようです。

手で触れてみると、ウール特有のしっとりとした柔らかさと、押し返してくるような弾力が伝わってきます。

 

メンテナンスについて:ウールフェルトを長く楽しむために

新しくなった羊毛フェルトを長く綺麗な状態で保つための、日常的なお手入れについても少し触れておきます。

  • 毛羽立ちへの対処: もし使っていく中で、再び表面に毛羽立ちや毛玉が出てきた場合は、無理に引っ張らずに、エチケットブラシで優しく撫でるか、よく切れるハサミで表面を軽く整えてあげてください。
  • 汚れがついた場合: 固く絞った濡れ布で拭き取る、もしくは汚れがひどい場合は中性洗剤を薄めて布で擦らずに押し当てるように拭き取るようにしてあげてください

 

今回はトムテスツールの張り替え事例をご紹介させて頂きました。

スツールやオットマンなどはソファや椅子の補助やちょっとした場面でも役立ってくれる便利な椅子です。

表面の生地が傷んでしまっても、クッションがへたってしまっても、張り替えや修理で再生が可能です。

張り替えを機に色や素材や柄を変えたりして、それによってお部屋や空間の印象も変えることが出来ます。

椅子が痛んでしまった時には空間のイメージを変えるチャンスと捉え、廃棄前に一度張り替えを検討してみては如何でしょうか。

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