2026.01.14

cassina / カッシーナの412キャブアームレスチェア 色を変えて塗装修理

BEFORE

AFTER

修理内容

メーカー名

Cassina/カッシーナ

WEBサイト→

メーカ紹介

17 世紀、イタリアに誕生したカッシーナ社は、家具業界において数少ないリーディングブランドとして世界中に知られています。完成度の高さとデザインの美しさは他の追随を許さず、数多くの製品がニューヨーク近代美術館の永久所蔵品になっています。

モデル名
キャブ412アームレスチェア
種類
ダイニングチェア
施工方法
本革のクリーニングや塗装
修理工賃
¥30000〜¥60000
お預かり期間
4週間
配送方法
自社便
修理内容

カッシーナ(Cassina)の象徴とも言える名作「412 CAB(キャブチェア)」。

今回はそのカッシーナのアームレスチェアのカラーチェンジを伴うフルレストアの内容をご紹介させて頂きます。

長年愛用され、深い味わいと共に経年劣化が進んだ「ナチュラル」カラーから、空間を引き締めるモダンな「ブラック」への塗り替え修理を行いました。

究極の機能美:カッシーナ「キャブ」チェアとは

イタリアモダン家具の最高峰、カッシーナを代表する「412 CAB」は、1977年にマリオ・ベリーニによってデザインされました。

発売以来、40年以上が経過した今もなお、世界中で愛され続けているマスターピースです。

構造の革新性

キャブチェアの最大の特徴は、その構造にあります。

多くの椅子が「骨組みにクッションを載せる」構造であるのに対し、キャブは**「スチールフレームに、最高級の厚革(サドルレザー)を被せる」**という画期的な発想で作られています。

いわば、椅子に「革の服」を着せるような構造です。

背もたれから脚部に至るまで、熟練の職人が一点一点、手作業でジッパーを締め上げて完成させます。

この無駄のないシルエットと、座るほどに体に馴染むフィット感は、他の椅子では決して味わえない唯一無二のものです。

今回の修理背景:経年劣化の状態

今回ご依頼いただいたキャブチェアは、オリジナルの「ナチュラル」色でした。

ナチュラルは革本来の風合いを楽しめる色でもありますが、長年の使用により以下のようなダメージが見受けられました。

1.油染み(黒ずみ): 特に背もたれの上部や座面など、直接肌が触れる部分には皮脂や油分が浸透し、濃いシミとなって現れていました。

1.革のスレ傷: 日常使いによる摩擦で、銀面(革の表面)が削れ、色が剥げている箇所がありました。

1.コバ(小口)の塗装剥がれ: 「コバ」と呼ばれる革の断面・淵周りの仕上げが剥がれ、革の繊維が露出している状態でした。

これらの劣化は、大切に使われてきた証でもありますが、高級家具としての凛とした佇まいを取り戻すため、今回は「ブラック」へのカラーチェンジを含む塗装修理を施すこととなりました。

塗装修理(カラーチェンジ)の工程

今回の修理は、革を染料で染める「アニリン仕上げ(染色)」ではなく、**「顔料(ピグメント)による上塗り塗装」**という方法で修理をしています。

これにより、既存のシミなどを修理し、出来てしまったひび割れや傷などを再生します。

均一性のある仕上がりが可能となります。

1.下地作り(研磨工程)

とても大事な工程で、最も時間を要するのが研磨作業になります。

まず、表面に残っている古いワックスや汚れ、剥がれかけた塗装膜を取り除きます。

目の粗さの異なる研磨剤(サンドペーパー)を使い分け、革の表面を平滑に整えていきます。

  • 粗目: 深い傷や段差を解消します。
  • 細目: 塗装の密着度を高めるため、表面を滑らかに仕上げます。

     

    2.調色と顔料の塗布

    オーナー様が求める「黒」を再現するため、革専用の顔料を調合します。

     一度に厚塗りするのではなく、**「薄く塗り重ね、乾燥させ、再び軽く研磨する」**という工程を何度も繰り返します。

    これにより、表面の表情を潰すことなく、深みのある黒を定着させていきます。

    3.コバ(淵周り)の再生

    剥がれていたコバ部分には、専用の補修剤を塗布し、再び滑らかな質感へと復元します。

    キャブチェアの綺麗な輪郭を強調するため、細部まで作業を進めていきます。

    4.仕上げ(トップコート)

    最後に、表面を保護し、艶を調整するためのトップコートを施します。

    これにより、耐摩耗性・耐水性が向上し、塗装した椅子全体を保護します。

    カラーの選択:それぞれのメリット・デメリット

    修理を機に色を変えることは、家具の印象を劇的に変えてくれます。

    今回扱った「ナチュラル」と「ブラック」それぞれの特徴を整理します。

    ナチュラル(Original Color

    • メリット:
      • エイジングの愉しみ: 使い込むほどに飴色に変化し、世界に一つだけの表情に育ちます。
      • 温かみ: 木の家具などとの相性も良く、空間に柔らかい印象を与えます。
    • デメリット:
      • 汚れの目立ちやすさ: 油汚れ、水滴、デニムの色移りなどが非常に目立ちやすく、一度染み込むと除去が困難です。
      • メンテナンスの難易度: 綺麗な状態を保つためには、こまめなメンテナンスを必要とします。

    ブラック(After Color

    • メリット:
      • 圧倒的な重厚感: 空間をモダンに引き締め、都会的で洗練された印象を与えます。
      • 実用性の向上: シミや汚れが目立ちにくく、綺麗な状態を維持しやすいです。
      • 不変の価値: 流行に左右されず、どのような建築様式にもマッチします。
    • デメリット:
      • 埃の目立ちやすさ: 明るい色の埃やペットの毛などが、表面に目立ちやすくなります。
      • エイジングの少なさ: ナチュラルに比べると「育てる」感覚は薄くなりますが、その分、常に凛とした表情を保ちます。

     

    愛着を繋ぐレストア

    完成したキャブチェアは、かつての疲れた表情を一掃し、カッシーナらしい気品に満ちた姿へと生まれ変わりました。

    顔料仕上げによるブラックは、単に色を変えただけでなく、革の表面を保護するバリアの役割も果たします。

    キャブチェアの革の下はスチールや樹脂のシート、モールドウレタンのフォームなどで形成されています。

    フレームや樹脂の部分が健全である限り、メンテナンスや修理を施すことで、数十年の使用も可能だと思います。

    今回のように、ライフスタイルの変化に合わせてカラーチェンジを施すことは、椅子に新しい命を吹き込み、再び共に歩むための選択です。

    あなたの暮らしに寄り添ってきた名作チェア。

    もし汚れや傷でお悩みなら、その「歴史」を活かしつつ、「未来」へ繋ぐための修理を検討してみてはいかがでしょうか。

    お客様の声
    見違えるように復活しました。
    丁寧なご対応に感謝しております。

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